筋萎縮性側索硬化症の新たなスコアリングシステムを開発

~新臨床スコア『FVC-DiP』が拓く新たなALS治験~

ポイント

・筋萎縮性側索硬化症は全身の筋力が低下していく難病で、症状の経過に個人差が大きく、臨床試験で治療法の効果を証明することが非常に難しい疾患です。
・本研究では、筋萎縮性側索硬化症に対する臨床試験の課題を解決するため、病状を評価するための新しい方法を開発しました。
・この方法は、臨床試験で新規治療法の効果を証明するための有用な手段となることが期待されます。

概要

 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS)は進行性に全身の筋力低下、嚥下・構音障害、呼吸不全をきたす難病で、本邦の患者数は約1万人です。世界中の研究者や製薬企業が効果のある治療法の実現を目指して開発を行っていますが、その多くが、新しい治療法を臨床現場に届けるための最終的段階である臨床試験(※1)で治療効果が証明されず、開発が中止されてきました。ALSの経過は個人差が大きく、臨床試験のような短い期間に治療法の効果を証明するには、病状の評価方法や臨床試験への参加基準の見直し等の工夫が必要であることが指摘されています。本研究では、ALSに対する臨床試験の課題を解決するために、病状を評価するための新しい方法を開発しました。
 九州大学病院ARO次世代医療センターの小早川優子助教、戸高浩司教授、九州大学大学院医学研究院神経内科学分野の磯部紀子教授、山﨑亮准教授らの研究グループは、ALSの大規模な世界的データベース(the Pooled Resource Open-Access ALS Clinical Trials database, PRO-ACT database (※2))を用いて、%努力肺活量(※3)の様々な低下パターンをスコア化しました(Forced Vital Capacity Decline Pattern scale, FVC-DiP)。FVC-DiPを用いて病状を評価することで、ALSの特徴をふまえた臨床試験をデザインすることができ、これまでの方法では見出せなかった治療効果を鋭敏に示せるようになる等、患者さんの病状にあった新しい治療法の開発が進むことが期待されます。
 本研究成果は、世界神経学会の公式な国際学術誌「Journal of the Neurological Sciences」に2022年8月28日(日)に掲載されました。

用語解説

(※1) 臨床試験
健康な人や患者さんを対象として、薬や医療機器などの効果や安全性を確認するために行われる試験。特に、厚生労働省から薬・医療機器として承認を得ることを目的として行う臨床試験を「治験」という。
(※2) the Pooled Resource Open-Access ALS Clinical Trials database, PRO-ACT database
ALSに対する複数の臨床試験結データを集めて作られたデータベース。1万症例以上の患者情報(検査値等)が含まれる。今回はプラセボ群(有効成分が含まれない薬を投与する群)に登録された症例のデータを使用した。
(※3) %努力肺活量
最大限に空気を吸ってから可能な限り一気に吐き出して測定した肺活量(努力肺活量)を、年齢・性別・身長から予測される肺活量で割り、×100をした値。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

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