育児期間中の女王アリにおいて飛翔筋分解と同調した「胸嚢」の形成過程を解明

~女王アリが飲まず食わずでワンオペ育児をできるわけ~

ポイント

・トビイロケアリ女王は、新たなコロニーを単独で創設する過程で食道の一部を袋状に膨張させ、幼虫のための液状の餌を貯蔵する「胸嚢」を形成した。
・胸嚢形成は飛翔筋の分解に続いて生じ、その筋分解で生じた胸部背方の間隙を占めるよう時間的・空間的に調和した。
・膨張する予定の食道背面部にみられる肥厚した食道壁のシワ構造は、胸嚢形成に特殊化した構造であることを示唆する。

概要

 玉川大学大学院農学研究科の宮崎智史准教授らの研究グループは、トビイロケアリ女王が新たなコロニーを単独で創設する際、餌のない条件下でも子を育て上げること、その育児期間に胸部食道の一部を膨張させ、幼虫のための液状の餌を貯蔵する「胸嚢」を形成することを明らかにするとともに、その形成過程を詳細に報告しました。トビイロケアリ女王が行うコロニー創設はアリにとって典型的な様式であるため、今回明らかにした胸嚢形成の過程は多くのアリに共通するのではないかと示唆されます。

 本研究の成果は2022年5月31日(火)に米国の国際科学雑誌「Arthropod Structure & Development」にオンライン掲載されました。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

気候変動と生物多様性の危機対策 意思決定に科学的根拠を

【学内向け】福井玲先生講演会「小倉進平の遺産」

関連記事

  1. 【5/15開催】第140回アジア・オセアニア研究…

    東江 栄 教授(農学研究院 資源生物科学部門)九州大学アジア・オセア…

  2. ブドウを根頭がんしゅ病から守る!

    拮抗細菌が根頭がんしゅ病を抑制する仕組みを解明 ~ 病原細菌に感染する頭部を…

  3. おいしい・種子が少ない・露地栽培も可能!新しいブ…

    九大のカンキツ研究の歴史が果樹産業の課題解決に貢献する長年の研究によ…

  4. 地域住民の参加が熱帯林の減少・劣化を抑制する

     ~ ただし、新設された地域では効果は低い ~ ポイント・熱…

  5. 日本一巨大なフキ「ラワンブキ」はなぜ大きいのか?…

    ―巨大化の原因解明に挑む― ラワンブキは、北海道足寄町の螺湾(らわん…

  6. 【6/12開催】第144回アジア・オセアニア研究…

    片山 歩美 准教授(農学研究院)九州大学アジア・オセアニア研究教育機…

  7. 小笠原諸島で独自の進化を遂げたと考えられるメイガ…

    ~これまで見過ごされていた?開張8 mmのガ~農学研究院松井 悠樹 …

  8. オンライン・シンポジウム「糸島半島の生物多様性と…

    オンライン・シンポジウム「糸島半島の生物多様性と自然共生圏構想       …