超重元素の初めての精密質量測定に成功

〜 新元素の新しい原子番号決定法の証明 〜

ポイント

・初の超重元素ドブニウム同位体の精密質量測定に成功
・新規発明したα-TOF 検出器で希少事象でも確実な同定可能に
・新超重元素の原子番号の確実な同定法検証

概要

 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)・素粒子原子核研究所・和光原子核科学センター(WNSC)、 国立研究開発法人理化学研究所(理研、埼玉県和光市)仁科加速器科学研究センター、九州大学を中心とする国際共同研究グループは、理研の重イオン加速器施設「RI ビームファクトリー(RIBF)」の気体充填型反跳核分離器(GARIS-II)と多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF) ( ※ 1)を用いて、原子番号 105 番の超重元素( ※ 2)ドブニウム同位体 257Db の質量を精密に測定することに成功しました。これは、超重元素の存在理由を解明する第一歩となる研究です。
 原子番号(=陽子数)が大きい超重元素は、正の電荷を持つ陽子間の反発力が大きく、どこまで原子番号の大きい元素が存在できるか分かっていないため、新元素の探索が続けられています。一方、なぜ存在できるかを解明するには、原子核の結合エネルギーの系統的研究が鍵となり、そのためには超重元素同位体の質量をくまなく精密測定することが必要です。
 理化学研究所の加速器施設において核融合反応で生成されたドブニウム同位体(257Db)は、研究グループが開発した MRTOF 質量分光器とα-TOF 検出器を用いることで、一日に 2 個程度しか観測できない稀な事象にも関わらず、質量を 1/100 万の相対精度で決定できました。これは、超重元素同位体を直接質量測定した世界で初めての実験です。また、今回の測定結果から、超重元素領域の原子核の原子番号を決定するには最低 2 事象を観測できれば良いことも実証しました。
 本研究の成果は、物理学の国際的な専門誌である「Physical Review C, Letter」に 8 月 31 日(米国東部時間)に掲載されました。

用語解説

( ※ 1)MRTOF質量分光器
多重反射型飛行時間測定式質量分光器の略称で、一定のエネルギーで一定の距離を飛ばした飛行時間からイオンの質量を分析する装置の一種。電気的な鏡を向かい合わせて、その中を数 100 回、1/100 秒かけて往復させることにより、1/100 万の分解能で質量を測定することができます。同時に複数の種類のイオンを測定できます。

( ※ 2)超重元素
元素には原子番号 1 の水素から 92 のウランまでの自然に存在しているものに加えて、人工的に 118 番までの元素が生成されています。そのうち原子番号 104 以降の重い元素を超重元素と呼んでいます。

詳細

こちらをご参照ください。

2021年度九州大学公開講座(言語文化研究院主催)「ゆらぐ人間像―近現代における思想と芸術のダイナミズム」(オンライン)

第18回市民公開講座「母と子どもの健康増進のヒント」(動画配信)

関連記事

  1. 300℃で世界最高のプロトン伝導率を有する安定酸…

    ~大型トラックなど固体酸化物形燃料電池の多用途化を推進~エネルギー研究教…

  2. 生物の神経回路に学ぶ超省エネIoT制御技術を確立…

    ~限られた電力制限下でのIoTデバイスの活躍に期待~ポイント1.…

  3. ミクロな揺らぎのさらに小さい構造に迫る

    ~プラズマ基礎実験の新展開~概要 プラズマ中でイオンと電子がつく…

  4. 次世代電池の内部挙動シミュレーターの開発に成功

    ~体積膨張が激しい高容量電池の長寿命化・早期実用化に貢献~工学研究院…

  5. IMI、アドバイザリーボードを設置・令和7年1月…

    IMIは本アドバイザリーボードでのアドバイスも踏まえて、社会の付託に応えるべ…

  6. 六⽅晶窒化ホウ素の⼤⾯積合成とグラフェン集積デバ…

    ~ ⼤きな絶縁性⼆次元材料で半導体産業の未来へ貢献 ~ポイント・…

  7. 九州大学応用力学研究所が大手企業4社と洋上風力に…

    ~研究所発の数値風況予測技術で風車ウエイク研究をさらに加速~ 日本の…

  8. 量子コンピュータでも解読できない安全な暗号技術を…

    ~ データサイズが小さく効率的なデジタル署名 -QR-UOV- ~ポ…