光照射を用いた超高解像度な遺伝子解析技術の開発に成功

 ~組織内に潜むがん細胞の病理診断などに応用可能~

ポイント

・組織内に潜むがん細胞や、ごく少数しか存在しない細胞の遺伝子解析は困難だった
・半導体製造技術をヒントに、光を照射した細胞だけの遺伝子発現を調べる超高解像度な解析技術の開発に成功
・COVID-19による炎症組織や、がん組織標本の病理診断を、低コストで行うことが可能になる

概要

 JST 戦略的創造研究推進事業において、九州大学 生体防御医学研究所の大川 恭行 教授と京都大学大学院 医学研究科の沖 真弥 特定准教授らの研究グループは、光単離化学(Photo-Isolation Chemistry=PIC)という技術を開発し、非常に小さな細胞集団や細胞の中の微小構造体で機能する遺伝子を光照射により検出することに成功しました。
 ヒトやその他の多細胞生物は少なくとも100種類以上の細胞タイプから構成され、空間的な配置や場所によってさらに細分化された機能や特性を持つことが知られています。一方で、これらの細胞を臓器や組織から取り出すと本来の特性を失うため、組織を破壊することなく特定の細胞のみを解析する必要がありますが、従来の手法では不可能とされてきました。
 本研究グループは、半導体製造工程の光による超微細加工技術をヒントに、光を照射したエリアからのみ、遺伝子の発現情報を取り出す(=単離する)技術を開発しました。PICと名付けられたこの技術により、脳のさまざまな領域に光を照射して、領域ごとに働きが異なる遺伝子のみを検出することに成功しました。さらにマウス胎児の非常に小さな細胞集団や、従来不可能であった細胞内の1000分の1ミリ以下の微小構造体からも遺伝子を網羅的に検出することができました。
 空間オミクスと呼ばれる研究分野の成果である本技術分野は、現在、国際的な開発競争が激化しています。こうした技術の多くは、利用に高額の費用を要しますが、PICは既存の遺伝子解析手法にたった数百円追加するだけで実施できるため、国際的な普及が見込まれる日本発の独自技術です。今後、この技術によってがんやCOVID-19による炎症など、正常と異常な細胞が入り混じった臨床組織の病理診断への応用が加速すると期待されます。

 本研究成果は、2021年7月21日(日本時間)に科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開されました。

詳細

プレスリリースをご参照ください。

妊婦の職業上の医療用物質の使用と出生児の乳児期の神経芽腫との関連

ヘテロナノグラフェン構造を用いた高効率・狭帯域青色発光体の開発に成功

関連記事

  1. 従来まで治療法のなかった進行型多発性硬化症の原因…

    医学研究院山﨑 亮 准教授ギャップ結合阻害による新規治療法開発に期待…

  2. 九州大学外国人短期留学プログラムJapan in…

    ~「Japan in Today’s World (JTW)第29期」 閉講…

  3. ディープラーニングにより多能性幹細胞が分化する未…

    データ駆動イノベーション推進本部新岡 宏彦 教授~視床下部-下垂体オ…

  4. 廃棄物から資源へ:CO₂とプラスチックを太陽光で…

    カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所Edalati Kaveh 准…

  5. 【申込期間延長‼】人工知能がもたらす九州の未来社…

    【申込期間延長‼】人工知能がもたらす九州の未来社会研究室では最先端の…

  6. 銅を“鉱石レベル”まで高濃縮する新規微生物を発見…

    -鉄酸化細菌による銅の濃縮機構を解明し、バイオマイニングへ期待-理学研究…

  7. 分子性量子ビットの量子重ね合わせ状態が化学物質に…

    工学研究院楊井 伸浩 准教授ケミカル量子センシングの実現への重要な一…

  8. 九州大学EUセンター (ジャン・モネ CoE 九…

    九州大学EUセンター (ジャン・モネ CoE 九州) ジャン・モネ・セミナー…