水の力でもっと精密にナノ粒子をとらえる!

~ナノポアデバイスの開発で高精度な解析の実現へ~

ポイント

・半導体技術を用いて、ナノ細孔とゲート電極で構成される集積ナノポアデバイスを開発した。
・ゲート電極に加える電圧を通して生じさせるナノポア内の水流によって、ナノポアを通過するウイルスサイズの粒子の速度を、従来技術に比して1/10000にまで低減することに成功した。
・本成果により、固体ナノポア法によるウイルス検査の精度が飛躍的に向上すると期待される。

概要

 大阪大学産業科学研究所の筒井真楠准教授・鷲尾隆教授・川合知二招聘教授と、華中科技大のHe(ハー)教授、九州大学先導物質化学研究所の龍崎奏助教・玉田薫教授による共同研究グループは、水中におけるウイルスサイズの物体の動きを精密に制御する固体ナノポア※1デバイスの開発に成功しました。
 固体ナノポア法は、半導体技術で作製するナノサイズの細孔(ナノポア)を通るイオン電流※2を計測することで、そこを通過する1個のウイルスの検出・識別を可能にする超高感度センサです。しかし従来の固体ナノポア法では、物体が細孔を、1/1000秒に満たない僅かな時間で高速に通過するため、イオン電流計測が追い付かず、ウイルスの識別精度が劣化する、という課題がありました。

そこで、筒井准教授らの共同研究グループは、固体ナノポアにゲート電極を集積したナノポア構造を開発しました。この新規デバイスでは、ゲート電極に加える電圧によってナノポア内に水流(電気浸透流※3)を生じさせ、その流れの向きや勢いを自在に変えることができます。本研究ではこの原理を応用し、ウイルスサイズのナノ粒子のナノポア通過速度を、従来のものに比して1/10000倍にまで大幅に減速できることを実証しました。本技術の応用により、固体ナノポア法によるウイルス検査の飛躍的な精度向上が期待されます。
 本研究成果は、ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の「Communications Materials」に、3月12日(金)19時(日本時間)に公開されました。

用語解説

※1 ナノポア
 ナノメートル(10 億分の 1 メートル)スケールの細孔。
※2 イオン電流
 電荷を持った原子・原子団(イオン)の運動によって生じる電流。本研究では、ナノポアを挟んで電圧を印加することで、イオンをナノポアに強制的に通過させる。ウイルスがポアを通過する際、ポア内のイオンはウイルスの体積によって排除されるので、瞬間的にイオンの流れが阻害され、電気的なシグナルとして検出できる。
※3 電気浸透流
 壁面に電荷を帯びた流路に電圧を加えたときに生じる溶媒の流れ。例えば負に帯電した壁面があれば、そこにはカチオンが引き寄せられ、電気二重層が形成される。流路に電圧を加えれば、壁面近傍に集まったカチオンは陰極に向かって移動し、その結果、溶媒の流れが生じる。本研究では、ゲート電極に加える電圧でナノポア壁面の帯電状態を変えることで、電気浸透流の流速を制御した。

詳細

こちらをご参照ください。

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