エネルギーに関連する社会公平性の国際比較評価フレームワークを開発!

~日本の社会公平性レベルはどれくらい?~

ポイント

・エネルギーに関連する社会公平性の国際比較評価フレームワークを開発
・日本の社会公平性レベル(2015年)は99カ国中42位
・再生可能エネルギーの普及を通した社会公平性の向上に今後期待

概要

 九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)の中石知晃学術研究員、チャップマン・アンドリュー准教授、同大学院経済学研究院の加河茂美主幹教授らの研究グループは、各国のエネルギーに関連する社会公平性を定量評価するための分析フレームワークを開発し、社会公平性の分布やその経年変化について国レベルで明らかにしました。
 近年、再生可能エネルギー(再エネ)の普及が国際的に加速するなか、社会公平性の向上を伴ったエネルギー転換(Just transition)の重要性が増しています。本研究では、この社会公平性の定量化を図るため、数理最適化モデルを応用した5つの社会指標の統合化フレームワークを開発し、世界99カ国(26年間)のエネルギーに関連する社会公平性レベルを、0(最低値)から1(最高値)の基準化されたスコアで国ごとに相対評価しました。
 各国のエネルギーに関連する社会公平性は、1990~2015年の間で平均的に約0.09ポイント進歩しました。特に顕著な上昇が見られたのは、中国(+0.71)やインドネシア(+0.54)などのアジア諸国でした。一方、日本や欧州などの先進国では、社会公平性の低下も確認されました。尚、2015年に最も社会公平性が高かった国はアイスランド(1.00)で、最も低かった国はコンゴ民主共和国(0.18)でした。日本の社会公平性スコア(2015年)は0.90で、99カ国中42位でした。
 日本や欧州などで見られる社会公平性の低下は、主に環境や健康に関する社会指標の低下に由来しますが、これらの指標は、再エネの普及により大幅に改善することが出来ます。つまり、再エネの利用促進は、社会公平性の観点から見ても重要であると結論付けられます。
 本研究成果は、6月7日(英国時間)にSocio-Economic Planning Sciences誌(2020 Impact Factor: 4.923)に公開されました。

用語解説

(※1)社会公平性の向上を伴ったエネルギー転換(Just transition)は、再エネの普及に際し、特定の個人やグループがその恩恵から取り残されることのないように注意するべきであるという理念のもと生まれた概念です。社会公平性の向上と再エネ普及率の上昇が両立されている場合、これが達成されていると考えることができます。
(※2)5つの社会指標は、世界銀行などが提供するデータを基に、それぞれ100点満点で推計されます。推計された5つの指標は、経済・経営分野で広く用いられるデータ包絡分析のアルゴリズムに従い、任意のウェイトで重み付けされた後、単一の指標(社会公平性スコア)へと統合されます。

詳細

九州大学ホームページおよびプレスリリースをご確認ください。

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