歯学研究院
前原 隆 講師
臓器線維化と免疫グロブリンのクラススイッチに関与するT細胞の発見
ポイント
・IgG4関連疾患は、全身の慢性炎症性疾患であるがその病態は不明である
・IgG4関連疾患の罹患臓器における病態形成に関わる病因T細胞とB細胞の同定に成功
・今後は臓器線維化を特徴とする他疾患の病態解明にもつながる
概要
IgG4関連疾患は、2001年に日本人によって初めて報告された新しい疾患概念であり、涙腺、唾液腺、膵臓、腎臓、胆管、後腹膜など全身のさまざまな臓器に腫瘤を形成する疾患です。高IgG4血漿と、罹患臓器へ多数のT細胞およびB細胞の浸潤ならびに特徴的な臓器線維化を認める全身性慢性炎症性疾患です。これまで、この疾患の罹患臓器における異常な免疫病態についての詳細は不明で、その解明が望まれていました。
九州大学大学院歯学研究院 口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学分野(当時)の前原隆講師(現・九州大学病院 顎口腔外科 講師)、古賀理紗子医員、川野真太郎教授、中村誠司教授(長崎国際大学)、Shiv Pillai(ハーバード大学 Ragon Institute of MGH, MIT, and Harvard)らの共同研究グループは、本研究により、罹患臓器に浸潤する全T細胞とB細胞を1細胞レベルで詳細に解析できたことで、IgG4関連疾患の実際に免疫応答が起こっている罹患臓器における病因T細胞群とB細胞群を世界で初めて明らかにしました。この研究成果により、IgG4関連疾患の罹患臓器における細胞傷害と臓器線維化に関わる免疫学的応答の一端を明らかにすることができました。
今後は、本疾患の病態解明につながるだけでなく、本研究で明らかにした特異な細胞を標的とした新しい治療法の開発が可能であると考えられます。
本研究成果は米国の雑誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に2024年4月1日(月)に掲載されました。
用語解説
((※1) Double negative B 細胞
ほとんどの成熟B細胞は、表面マーカーであるIgDとCD27の発現で4つのサブタイプに分かれるが、最近になって自己免疫疾患でその増加が明らかになってきた集団がIgD-CD27-B 細胞
(※2) scRNA sequencing(図1)
シングルセル遺伝子発現解析:1つ1つの細胞の遺伝子発現を解析
(※3) TCR sequencing(図1)
T細胞受容体多様性解析:多様なT細胞集団の中に特定のT細胞クローンが優位に存在するか否かの解析
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