農学研究院
藤田 龍介 准教授
今後の鳥インフルエンザ対策にはハエにも注目
ポイント
・依然として猛威を振るう高病原性鳥インフルエンザ(※1)に対して対策が急務である
・冬季に活動するハエが鳥インフルエンザウイルスを媒介することを発見
・これまで想定されていなかったハエという新たな伝搬ルートに着目した対策の構築につながる
概要
高病原性鳥インフルエンザは世界的な問題となっており、2022年冬には国内でも大流行し、卵の価格が高騰するなど、大きな話題となりました。養鶏では感染症の発生を阻止すべく、非常に厳しい防疫措置がとられていますが、高病原性鳥インフルエンザの発生を抑止するには至っていません。そのため、現在の防疫措置では想定されていないような感染ルートが存在している可能性があります。
今回の研究では、高病原性鳥インフルエンザが流行している地域ではハエがウイルスの運び屋となっていることを発見しました。
九州大学大学院農学研究院の藤田龍介准教授、比較社会文化研究院の舘卓司准教授らの研究グループは、2022年から2023年の冬シーズンに高病原性鳥インフルエンザが頻発した鹿児島県出水市において、冬に活動が活発なハエとウイルスの関係について調査しました。オオクロバエ(※2)は冬季に活動が活発となるハエで、動物の死骸や糞を食べます。今回の調査では、感染した鳥の死骸や糞を食べたオオクロバエが、高病原性鳥インフルエンザを取り込んで飛び回っていることを明らかにしました。
今回の発見は、鳥インフルエンザの伝播経路のひとつを明らかにしたもので、今後の防疫対策の構築に役立つことが期待されます。
本研究成果は英国の雑誌「Scientific Reports」に2024年4月30日(火)(日本時間)に掲載されました。
研究者からひとこと
ハエは夏のイメージが強いですが、冬に活動するハエもいます。オオクロバエは普段ひと目につきづらいですが、動物や鳥が死ぬとあっという間に嗅ぎつけてやってきます。また糞などにも引き寄せられるため、畜舎にもよく飛んできます。鳥インフルエンザなどの感染症対策には、今後ハエ対策も重要になってくると思います。
用語解説
(※1) 高病原性鳥インフルエンザ
インフルエンザAウイルスのうち、鳥類に感染し高い病原性を示すウイルスによって発生する感染症。H5N1亜型インフルエンザウイルスなどが知られる。日本には主に野鳥によって晩秋に持ち込まれ、冬季に流行する。
(※2) オオクロバエ
学名 Calliphora nigribarbis。黒色で成虫のサイズは1.5–2cmと大きい。国内のほとんどの地域に分布している。平地では秋から冬にかけて見られ、春以降は高山や北方へと移動する。非常に高い飛翔能力と嗅覚を有し、動物の死骸等に敏感に反応して飛来する。形態的によく似たケブカクロバエも似た生態をしている。
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詳細
本研究の詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。