無線電力伝送システムの性能をAIで全面的に予測

システム情報科学研究院
Ramesh Pokharel(ポカレル ラメシュ) 教授

伝送距離、周波数、効率を考慮し、AIによる設計自動化の実現

ポイント

・従来のAIモデルでは、一定の伝送距離を考慮し、伝送効率のみが予測可能であった。
・本研究では、AI翻訳の概念から、無線電力伝送システムの構造が『外国語』で表現され、周波数に依存する電気特性に『翻訳』されることに成功した。
・伝送距離、電気素子などによる結合(Coupling:カップリング(※1))を提案のAIで分析し、電気特性の「形」に解明する。
・提案のAIで予測した電気特性によって、無線電力伝送システムの伝送効率だけではなく、動作周波数などの電気特性も高精度で予測でき、設計自動化が実現可能となり、システム設計時間が大幅に短縮することに成功した。

概要

近年、無線電力伝送(※2)システムは充電ケーブルが不要であり、特に電気自動車、スマートフォン、医療機器のワイヤレス充電等に広く普及している。九州大学大学院システム情報科研究院のRamesh Pokharel(ポカレル ラメシュ)教授、同研究院のAdel Barakat 助教と同大システム情報科学府の姜 欣(Jiang Xin)博士後期課程(3年生)の研究チームは、無線電力伝送システムの周波数及び伝送距離に依存する電気特性を初めて人工知能(AI)を活用して予測することに成功し、システムの設計時間を短縮することができた。

これまで、無線電力伝送システムに関連した発受信器の設計においては、AIによる予測システムの提案があったが、従来のAIモデルは伝送効率の予測に限られており、システムの複数の電気特性(動作周波数、結合など)を予測することが困難であった。

本研究では、AI翻訳の概念から、発受信器のレイアウト、電気素子、伝送距離を周波数、および電気素子によって変化する電気特性(S-パラメータ(※3))の「形」に「翻訳」する。提案のAIモデルが従来のモデルよりも多くの電気特性を予測・応用できることになり、システムの設計自動化が可能となった。

本研究成果は米国の雑誌「IEEE Transactions on Antennas and Propagation」に2024年3月7日(木)(日本時間)に掲載された。

用語解説

(※1) カップリングパフォーマンス: 送信側と受信側の間の電磁結合による電気特性。
(※2) 無線電力伝送:電⼒を物理的な接触なしで伝送する技術。
(※3) Sパラメータ:S-parameterは、高周波電子回路や高周波電子部品の特性を表すために使用される回路網パラメータのひとつ。散乱行列(S行列)または散乱パラメータとも呼ばれる。回路網の通過・反射電力特性を表現する。
(※4) オーバーカップリング:発信器と受信器が近づき過ぎるために生じる現象で、動作周波数が一つから二つに分かれることを指す。これは、無線電力伝送の性能に明らかな影響を与える可能性がある。

研究に関するお問い合わせ先

システム情報科学研究院 Ramesh Pokharel(ポカレル ラメシュ) 教授

詳細

本研究の詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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