染色体機能を支えるリング型タンパク質をDNAから外す仕組みを解明

~細胞の設計図であるDNAを安定に維持する反応の理解につながる~

ポイント

・DNA複製や修復を支えるタンパク質であるPCNA(※1)は、リング構造をとってDNAに結合し、様々な反応が適切に動作するようにはたらきます。
・本研究では、脊椎動物においてPCNAをDNAから外す反応(アンローディング)を担う酵素とその制御を明らかにしました。
・PCNAを適切なタイミングで外すことは、DNAを安定に維持するために必須です。本研究は、DNA複製やDNA修復など様々な反応が協調的に機能する機構の理解につながります。

概要

 細胞が増殖し、正常に機能するためには、細胞の設計図であるDNAを正しく複製、維持することが必要です。そのためには、DNAの正確な合成に加えて、損傷修復など複数の反応が適切に行われる必要があります。複製クランプPCNAは、DNAを取り囲むように結合するリング型のタンパク質で、DNA複製や修復など、様々な反応に関与する因子の足場として機能します。PCNAは、クランプローダー複合体と呼ばれる因子によってDNAに乗せられます。私たち真核生物には4種類のクランプローダー複合体(※2)が存在し、それぞれのクランプローダー複合体には機能分担があると考えられています。一方で、クランプローダー複合体を欠失させるとPCNAを乗せる反応にも影響を与えてしまうことから、クランプローダー複合体の機能分担や制御機構はよく分かっていませんでした。また、PCNAはDNAを取り囲むように安定に結合するので、不要なPCNAを取り外すことも染色体の安定維持に必要であることが分かっていますが、取り外しを担う因子やその制御については十分に理解されていませんでした。
 九州大学大学院理学研究院の高橋達郎教授、河添好孝助教、英国Dundee大学のJulian Blow教授、Peter Gillespie上級研究員らの研究グループは、細胞内に近い生理的環境を試験管の中で再現できる、「ツメガエル卵抽出液」を用いて、PCNAを取り外す反応の制御メカニズムを明らかにしました。Atad5は真核生物が持つ4種のクランプローダー複合体の一つを構成する因子です。本研究グループは、ツメガエル卵抽出液中の4種類のクランプローダー複合体を全て定量し、Atad5を含む複合体が全体のわずか3%に相当することを発見しました。それにも関わらず、ツメガエル卵抽出液から抗体を用いてAtad5を除去すると、PCNAのDNAからの解離が大きく遅延しました。このような遅延は、他のクランプローダー複合体を免疫除去した際には観察されませんでした。さらに、PCNAのDNAからの解離は、PCNAと相互作用するペプチド分子(※3)を加えるだけでも遅延しました。以上の結果は、Atad5を含むクランプローダー複合体が、相互作用因子が結合していない、つまり他の因子が利用していないPCNA分子を優先的に取り外していることを示唆しています。
 これらの発見は、PCNAを足場として利用するDNA複製、修復など様々な反応がどのようにして制御されているのかを明らかにするものです。Atad5を人為的に失わせた細胞では、ゲノムの安定性が下がることも知られており、本研究は、PCNAが適切に外されないことによって生じる様々な障害の解明にもつながることが期待されます。
 本研究成果は、米国の雑誌「Journal of Biological Chemistry」に現地時間2023年12月21日(木)に掲載されました。

用語解説

(※1) PCNA
DNAの複製や修復などに必要なリング型のタンパク質であり、DNAを取り囲むように結合する。DNA複製や修復などに関わる様々な因子と結合することによって、それらの反応を協調的に機能させる役割を持つ。
(※2) クランプローダー複合体
PCNAのDNAへの取り付けや取り外しを行うタンパク質複合体である。真核生物には4種類のクランプローダー複合体があることが知られている。
(※3) ペプチド分子
アミノ酸(タンパク質の構成要素)がつながった短い鎖状の分子。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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