日本の草資源を活用した黒毛和種牛での完全牧草牛の生産

~ 日本の草資源を活用した黒毛和種牛での完全牧草牛の生産~

 九州大学大学院農学研究院の村本匠、田口佑充、髙橋秀之准教授らはトゥルーバアグリ株式会社との取り組みの中で、出生後から出荷まで一貫した放牧と乾草給与のみで育てた黒毛和種牛の完全牧草牛を生産しました。今回の試験では放牧に適していないと考えられてきた黒毛和種牛において、乾草の給与を毎日行うことで増体が良くなる可能性が示されました。
 近年、輸入飼料の高騰や耕作放棄地の増加から放牧が再注目されています。しかしながら、いまだ日本での牧草牛の流通は少なく、黒毛和種牛を国産牧草のみで放牧飼育し、食肉として流通している例はほとんどありません。そこで本研究では黒毛和種牛を生涯を通して放牧させ、補助飼料として乾草を毎日給与することで国産牧草100%の完全牧草牛を生産しました。試験の結果、26か月齢時の体重は去勢牛で約580kg、メスで約440kgとなりました。以前、当研究室において黒毛和種牛を同様に牧草のみで飼育し、補助飼料として乾草をロールで給与した際のメス(26か月齢時)の体重は約340kgでした。一方、今回の試験では、哺乳期に乾草を食い込ませ、離乳後からも継続して乾草を給与することで大幅に増体が改善されました。今回の飼養管理ノウハウを用いることで、国産牧草のみでの放牧飼育においても増体が良くなる可能性が示されました。
 今回の飼養管理ノウハウは自給の国産牧草のみを用いていることから飼育コストも大幅に削減することができ、経営面においても優れた技術です。また、試験牛の格付けはどちらもB-2であり、近年の赤身肉需要の高まりに見合った赤身の強い牛肉を生産することが可能でした。今後は、黒毛和種牛での完全牧草牛の飼養管理ノウハウを技術移転していくことを目指します。
(特許出願, 牛の放牧飼養管理方法, 特願2023-193567)

お問合せ

大学院農学研究院 准教授 髙橋 秀之
電話:0974-76-1377
FAX:0974-76-1218
Mail:takahashi.hideyuki.990★m.kyushu-u.ac.jp
※メールアドレスの★を@に変更してください。

詳細は九州大学ホームページからご確認いただけます。

【2/16開催】就活対策講座「面接・グループディスカッション対策(実践編)」の開催について

世界初!ダイズ油脂に含まれるフラン酸合成に関与する遺伝⼦を発⾒

関連記事

  1. 「新食品素材・マイナーサブシステンスとしての昆虫…

    熱帯農学研究センター准教授 百村 帝彦 九州大学アジア・オセアニ…

  2. 第86回サイエンスカフェ@ふくおか「未来の魚の謎…

    「未来の魚の謎に迫る!」~新しい養殖のテクノロジー~ 開催のおしらせ…

  3. オムニバスセッション「知の形成史」#3 食資源…

    オムニバスセッション「知の形成史」#3 食資源としての昆虫〜昆虫の新たな価値…

  4. 日本畜産学会第128回大会(福岡大会)市民公開シ…

    日本畜産学会第128回大会(福岡大会)市民公開シンポジウムのご案内3…

  5. 持続可能な開発目標(SDGs)の新たな経済成長の…

    -インフラ、環境、健康、教育の政策立案に貢献-今回、九州大学大学院工…

  6. 九州-ベトナム農学フォーラム ウェビナー

    「九州農業とベトナム農業の課題と未来」 ベトナムから日本への留学生は…

  7. 九州大学昆虫食(カイコクッキー)販売開始!

    ~芸工生がデザイン! もっと身近な昆虫食へ~このたび、九州大学では第…

  8. 椎葉の奥⼭では、シカ増加に伴う⼟壌侵⾷により、ブ…

     ~ 椎葉の奥⼭では、シカ増加に伴う⼟壌侵⾷により、ブナが衰退 ~ …