~ 離乳期の⾷習慣が1歳6か⽉児の⼝腔細菌叢形成に影響することが明らかに ~
ポイント
・⼝腔細菌叢は⽣後4ヶ⽉から1歳半の間に急激に成熟し、1歳6か⽉児ですでに成⼈の⼝腔細菌叢の⼟台が形成されていた。
・⽢味飲料やお菓⼦の摂取が多い等の⾷習慣がある1歳6か⽉児では、⼝腔細菌叢のバランス異常の兆候が認められた。
概要
私たちの⼝腔には膨⼤な数の細菌が⽣息しています。近年、この⼝腔細菌群集(⼝腔細菌叢)のバランス異常がう蝕(むし⻭)や⻭周病などの⻭科疾患だけでなく呼吸器や消化器など全⾝の疾患とも関係することが⽰唆されています。しかし、そのバランス異常の予防法や改善法については解明されていません。
九州⼤学⼤学院⻭学研究院⼝腔予防医学分野の影⼭伸哉助教、⽵下徹教授、⼭下喜久名誉教授らの研究グループは、⼝腔細菌叢を健康なバランスに制御・誘導する要因を探索するため、乳幼児期の⼝腔細菌叢のコホート研究を⾏っています。今回、1歳6か⽉児の⼝腔細菌構成を⾼精度に同定した結果、すでに成⼈でみられる⼝腔細菌叢のバランス異常の兆候が認められることや、その細菌構成バランスが⽣後1歳半までの⾷習慣と強く関連することを明らかにしました。
研究グループは、福岡市東区で⾏われた1 歳6 か⽉児健診を訪れた216名の乳児の⼝腔細菌叢を⾼精度に決定しました。その結果、1歳6か⽉児の⼝腔細菌叢は⾃分の⽣後4か⽉時よりも⺟親の細菌叢により類似していることが分かりました。このことから、⼝腔細菌叢バランスがこの1年2か⽉間で急激に成⼈に近づくことが⽰唆されました。また、⼀部の1歳6か⽉児ではすでに成⼈で観察されるバランス異常の兆候が認められ、特に⽢味飲料やお菓⼦の摂取が多い、フルーツの摂取が少ない、離乳が完了していない、あるいは親と⾷器を共有している幼児で多く観察されました。これは、離乳期や離乳完了直後の⾷習慣の管理によって⼝腔細菌叢を健康なバランスに制御できる可能性を⽰唆しています。今回得られた結果は、⼝腔細菌叢の制御に基づく新たな予防⻭科医療の確⽴につながる可能性を秘めています。
本研究成果は2023年10⽉11⽇付けで⽶国微⽣物学会が発⾏するオンライン学術誌「mBio」に掲載されました。
詳細
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