糖尿病網膜症の進行に関わるメカニズム、網膜表面での免疫細胞自己増殖を発見

~糖尿病網膜症の進行に関わるメカニズム、網膜表面での免疫細胞自己増殖を発見~

ポイント

1. 糖尿病網膜症において、失明に至る末期では網膜症が網膜内から網膜外の硝子体(眼球内のゼリー)に進展しますが、その進展機序は不明でした。
2. 本研究で、網膜と硝子体の境界である網膜硝子体界面に存在する免疫細胞(マクロファージ)に着目し、糖尿病網膜症では血管内皮増殖因子(VEGF)という因子の上昇によりマクロファージの自己増殖が起きていることを発見しました。
3. 現在、VEGF 阻害薬は糖尿病黄斑浮腫や加齢黄斑変性に使用されていますが、この薬剤により硝子体界面マクロファージの増殖が抑制され、糖尿病網膜症において増殖期への進展が抑制されるメカニズムが示されました。

概要

糖尿病網膜症は糖尿病の進行に伴い発症する網膜の病気です。糖尿病網膜症の初期は網膜内の出血や浮腫が観察され、多くは自覚症状がありませんが、放置すると末期である増殖糖尿病網膜症に進展し失明に至ります。この増殖期では病気が網膜の中から網膜外の硝子体(眼球内のゼリー)へと進展して行きます。しかし、この進展メカニズムは分かっていませんでした。
九州大学大学院医学研究院眼科学の園田康平教授、中尾新太郎臨床准教授(九州医療センター眼科医長)らの研究グループは、糖尿病網膜症患者さんの光干渉断層計という検査機器の画像解析によって、病気の進行とともに網膜と硝子体の境界である網膜硝子体界面において高輝度反射物質が増加していることを観察しました。また糖尿病網膜症モデル動物において、この高輝度反射物質が免疫細胞(マクロファージ)であることを突き止めました。さらに糖尿病網膜症で上昇する血管内皮増殖因子(VEGF)という因子により、このマクロファージが自己増殖を起こし、一方でVEGF 阻害によりこの増殖が抑制されることを見出しました。
VEGF 阻害薬は現在、糖尿病黄斑浮腫や加齢黄斑変性に使用されていますが、臨床試験の結果からその投与により糖尿病網膜症の病期が改善することが示されています。今回の結果より、糖尿病網膜症においてはVEGF 阻害薬により網膜硝子体界面のマクロファージ活性化が抑制されることが、失明につながる増殖期への進展を抑制するメカニズムの1つと考えられます
本研究の結果は2022年10月7日の米国科学雑誌「Diabetes」掲載されました。

詳細はプレスリリースをご確認ください。
九州大学病院ホームページもあわせてご参照ください。

「世界中どこでも誰でも超解像度イメージング」(第70回 Q-AOS Brown Bag Seminar Series)

九州大学栄誉教授バリー・シャープレス博士の2度目のノーベル化学賞受賞について

関連記事

  1. 遺伝子の転写の「伸長」場所は動きやすいことを発見…

    ~生きた細胞の核の中で遺伝子が転写される場所のリアルタイム可視化に成功~…

  2. 個別化ネオアンチゲンワクチン療法の膵臓がんでの治…

    ~膵臓がんに対する新しい免疫療法の可能性~医学研究院仲田 興平 准教…

  3. 全国8地域からなる⼤規模認知症コホート研究で社会…

    〜社会的孤⽴と脳萎縮および⽩質病変との関連を報告〜ポイント・…

  4. 哺乳類の多様で複雑な臼歯は単純な原理から生じる

    ~草食は縞模様、肉食は水玉模様~ポイント・数理モデルを用いてマウ…

  5. 【8/29開催】九州大学 新技術説明会 【対面開…

    ~九州大学の最新の研究成果をご紹介します~来る8月29日に東京・市ヶ谷の…

  6. 《12/3開催》ALL九州アカデミア×MEDIS…

    医療機器開発をご検討の方、起業を検討している方、ぜひ奮ってお申し込みください…

  7. 4-オクチルイタコン酸ががん細胞の抗酸化機構を破…

    ~新規がん治療薬としての可能性に期待~歯学研究院安河内 友世 准教授…

  8. 【1/6開催】九州・沖縄地域小児がん医療提供体制…

    ~ 「おうちに帰りたい」を支える子どもと家族の在宅医療 ~ 九州大学…