植物の細胞と器官の関係を探る理論モデルを構築

〜植物の細胞と器官の関係を探る理論モデルを構築〜

ポイント

・植物の子葉*1の表面を構成する表皮細胞のジグソーパズル型の形づくりが損なわれた場合に子葉器官の形が異常になることを見出し、この現象を説明する理論モデルを構築しました。
・本研究成果は、ジグソーパズル型の細胞の形づくりの生物学的な意義に新たな知見を与えるとともに、本研究で構築した理論モデルによって植物に限らず様々な生き物の形態形成機構を探ることが期待されます。

概要

 熊本大学大学院自然科学教育部修士課程2年(当時)の菊川琴美大学院生と同大学大学院先端科学研究部の檜垣匠教授を中心とした研究グループは、植物の子葉の表面の大部分を構成する表皮細胞の形の異常によって子葉器官の団扇型の形づくりが損なわれることを見出しました。また、この現象を理解するため、九州大学大学院医学研究院の今村寿子助教と共同して、細胞と細胞集団の形に関する理論モデルを構築しました。この理論モデルに基づくコンピュータシミュレーションによって実際の植物で観察された現象が再現され、理論モデルの妥当性が認められました。
 多くの双子葉植物の葉の表皮細胞は成長に伴ってジグソーパズル型の特徴的な形態へと変化を遂げます。この細胞変形の過程を制御する遺伝子や細胞内の構造体の研究は精力的に進められ、分子レベルの制御機構が明らかになっています。しかし、その特徴的な細胞形状の生理学的な意義については不明な点が多く残されていました。この研究成果は、細胞がジグソーパズル型へ変形する生物学的意義のひとつとして器官レベルの形づくりへの貢献があることを示したものです。
 本研究成果は令和5年9月18日に科学雑誌「Plant and Cell Physiology」オンライン版に掲載されました。本研究は熊本大学国際先端科学技術研究機構 Research Cluster ’Digital Plant Cell Biology’、日本学術振興会科研費、科学技術振興機構 CRESTの支援を受けて実施されました。

用語解説

*1 子葉:植物個体で最初に形成される葉のこと。種子の中にある胚において既に形成されている。双子葉植物では双葉とも呼ばれる。
*2 数理モデル:自然界で実際に起こる現象を数学的に表現したもの。これにより観察や実験だけでは分からない現象の理解につながる。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

【12/14・15開催】専門家から直接学べる!産業数理統計チュートリアルを開催

小惑星リュウグウから始原的な「塩(Salt)」と有機硫黄分子群を発見

関連記事

  1. 山原森林生態系の外来種侵略に対するレジリエンス

    山原森林生態系の外来種侵略に対するレジリエンス琉球大学農学部の辻瑞樹…

  2. 【作品募集8/1~】SDGs デザインインターナ…

    「未来の食文化」をデザインしよう!九州大学大学院芸術工学研究院が…

  3. 「はやぶさ2」初期分析チーム 2021年6月より…

    「はやぶさ2」初期分析チーム 2021年6月より試料の分析開始ポイン…

  4. 九州地方において中国からの越境大気汚染の減少を示…

    九州地方において中国からの越境大気汚染の減少を示唆!渓流水質にも反映…

  5. 地震のマグニチュード-頻度特性の断層強度依存性と…

    理学研究院松本 聡 教授超多点観測から見えてきた、新たな地震活動の見…

  6. キャンパス内で育てられた農作物を販売しています

     九州大学農学部附属農場で作られた農作物 九州大学では、年間を通…

  7. 矢原名誉教授が牧野富太郎のふるさと高知県でギボウ…

    ~種の保存法による緊急指定種に指定しDNA判定で盗掘防止へ~ポイ…

  8. ブドウを根頭がんしゅ病から守る!

    拮抗細菌が根頭がんしゅ病を抑制する仕組みを解明 ~ 病原細菌に感染する頭部を…