グルコシノレートの分解が⽌まると植物体内の蓄積と分布が変化する

– 可⾷部中の機能性成分の蓄積制御に期待 –

ポイント

・グルコシノレートの分解が⽌まることが植物体に与える影響は不明
・体内のグルコシノレート分布が変化し、茎の成⻑に伴って葉から種⼦へのグルコシノレート輸送が⼤きく促進されることを発⾒
・可⾷部中のグルコシノレート量を調節する技術への応⽤に期待

概要

 植物が硫⻩の少ない環境におかれると、機能性含硫代謝物グルコシノレートの量が減少し、⽣育に必須な他の含硫代謝物の合成へと再利⽤されます。硫⻩は動植物の⽣存になくてはならない元素です。植物は硫⻩を硫酸イオンとして取り込み、アミノ酸やタンパク質など、⼈間にとって有⽤な化合物を合成しています。アブラナ科植物が作るグルコシノレートは、病害⾍を寄せつけない働きをするとともに、発ガンを予防します。グルコシノレートは硫⻩の貯蔵にも働きますが、成熟植物におけるグルコシノレート分布にその分解がどのような意味を持つのかは分かっていませんでした。
 グルコシノレートの分解はミロシナーゼという酵素によって触媒され、硫⻩が不⾜した時に働くミロシナーゼがBGLU28, BGLU30 です。九州⼤学⼤学院農学研究院の張柳⽒、丸⼭明⼦准教授らの研究グループは、佐賀⼤学、コペンハーゲン⼤学と共同で、BGLU28, BGLU30 を⽋損させると、植物の⽣⻑が抑制され、植物体内のグルコシノレートの分布が変化することを明らかにしました。
 研究グループは、硫⻩が不⾜した時のグルコシノレート分解に働くBGLU28、BGLU30 を⽋損させた植物では、硫⻩が不⾜した時の葉や種⼦でのグルコシノレート組成や量が変化することを⾒出しました。茎が伸びる前の植物では葉のグルコシノレートが増えますが、茎が伸び始めると種⼦へと輸送されるため、むしろ葉のグルコシノレートが減ります。環境条件に応じて代謝物の分布を変化させる仕組み、有⽤化合物の蓄積量調節に関する新しい発⾒です。
 アブラナ科野菜には、⽩菜やキャベツ、⼩松菜、ブロッコリなど多くの種類があり、⾷べる病気予防が期待されています。この成果を作物中のグルコシノレート量を調節する技術に⽣かしたいと考えています。
 本研究成果は、2023 年7 ⽉19 ⽇(⽔)に国際学術雑誌「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載されました。本研究は特別研究員奨励費JP21J21218、科学研究費補助⾦JP17H03785、JP22H02229、JP22H05573、飯島藤⼗郎記念⾷品科学振興財団研究助成、Novo Nordisk Fonden, NNF20OC0065026の⽀援を受けて⾏われたものです。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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