東南アジアのアリ類の起源と種分化パターンを解明

マレー半島を起源地とした多様化と熱帯⾬林の固有種の保全

ポイント

・東南アジア地域には多くのアリ類が⽣息しているが、いつ頃どの地域を起源地として多様化していったかはほとんど知られていなかった。
・東南アジアに分布し、膨らんだ胸部が特徴的なフクラミシリアゲアリ種群を、DNA 情報を⽤いて系統関係を明らかにした結果、中新世の約1200万年前にマレー半島周辺を起源地として出現したことがわかった。その後、陸地をまたぐ分散や海に遮られた分断を経て新たな種が出現した。
・熱帯⾬林の樹上にある着⽣シダの内部に巣をつくるアリC. difformis がいるが、その巣に同居する別のアリC. tanakai はボルネオ島だけに分布する固有種で、それら2種はおよそ100万年前に分岐したことが明らかになった。熱帯⾬林の伐採が進⾏すると、それら2種の絶滅が危惧されるため、世界でもボルネオ島だけにしかみられない固有種の絶滅を防ぐためにも、熱帯⾬林の保全が強く望まれる。

概要

 東南アジア地域には多くのアリ類が⽣息していますが、いつ頃どの地域を起源地として多様化していったかはほとんど知られていません。どの地理的構造が種分化に寄与したのか、ある地域だけにみられる固有種がどのようなメカニズムで出現したのかは⽣物多様性の解明と保全に重要な情報となります。
 九州⼤学熱帯農学研究センターの細⽯真吾助教、総合研究博物館の丸⼭宗利准教授および⿅児島⼤学の⼭根正気名誉教授らの研究グループは、東南アジアの熱帯⾬林にみられるフクラミシリアゲアリ種群の分⼦系統解析を⾏い、系統関係を明らかにしました。DNA 情報と化⽯情報を⽤いた解析から同種群が中新世の約1200万年前に出現し、⽣物地理学的解析からマレー半島周辺を起源地とし、陸地への分散や海の障壁による分断によって新たな種が分岐したことが⽰唆されました。クラ地峡やマカッサル海峡が種分化に重要な役割を果たしたと思われます。祖先的なグループは通常の胸部を有していて、その⼀部が膨らんだり刺状の突起が退化したりするなどの形態進化が起こったと考えられました。
 熱帯アジア地域は多くの⽣物種が⽣息していますが、分類学的研究が遅れているために未だ発⾒されていない未記載種が数多く存在しています。今回の発⾒のように様々なグループで起源地となった地域が推定され、種分化様式が明らかになることによって、⽣物多様性の解明と保全に重要な具体的な地域が明らかになっていくと思われます。
 本研究成果は英国ロンドン・リンネ協会の国際学術誌「Zoological Journal of the Linnean Society」に2023年6⽉14⽇(⽉)(⽇本時間)にオンライン掲載されました。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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